サスティナブル経営とは、環境・社会・経済の分野に注力して企業の社会的責任を果たしていくという経営の考え方です。昨今ではESG経営やSDGsなど、企業が「何のために存在するのか」を強く問われる時代になりました。
今は、商品を出せば売れる時代ではなく、存在理由を自ら定義し、それによって顧客から愛される存在にならなければいけません。
採用も同様です。募集すれば人が集まるのは大手企業だけです。大手企業であっても、その企業がどのような社会貢献活動を行っているのか確認する求職者も多くなりました。
そのため、インナーブランディングにおいても、サスティナブル経営は無視して通れないポイントなのです。そこで今回は、サスティナブル経営をどのようにインナーブランディングに取り入れていくかについて解説します。
持続可能な社会のために何ができるのか?
インナーブランディングにおいても採用においても、「どのような社会づくりに加担するのか」を逆算して強みを作り上げなければいけません。もし現状の事業に関係するものがなければ、今ある技術でつくりだし、自社の事業に組み込む必要があります。
「持続可能な社会をつくるために、私たちはこうして貢献します」という訴求は、当然、採用の強みにもなります。
ESGの数値化と開示
ESGとは、以下の3つから構成される内容です。
- 環境(Enviroment)分野:気候変動への対応力や循環型社会への貢献力など。(自然本質)
- 社会(Society)分野:男女や国籍等の多様性や公平性、また従業員の権利保護、賃金の格差問題への対応など。(人的資本)
- ガバナンス(Governance):経営の透明性や公平性、また法令遵守やステークホルダーへの情報開示など。
これらの数値は「非財務情報」として金融機関でも評価の対象になりつつあります。
事業内容によってはすべての項目が考慮対象として当てはまらない場合もあるので、その場合は当てはまらない項目を無視していただいても問題はありません。
ただし、当てはまる項目においては、数値化を行い、開示していくことで強みになります。実際に、ESGを数値化し、採用で応募者に伝える企業は増えています。
企業が社会的な貢献を示すことで、そこに共感し、人が集まってくるのです。
インナーブランディングがサスティナブル経営を推進させる
サスティナビリティ経営やSDGsを推進していくことで、経営において重要な項目を整理し、数値化できるようになります。
たとえば、「有給の取得率」・「女性従業員比率」・「賃金格差」・「報酬水準」・「社員の働きがい」・「従業員満足度」などです。
これらを見える化することで、経営を効率化する効果もありますし、企業自身がどこに力を注ぐべきなのかわかりやすくなります。
また、サステナビリティ経営の文脈では、非財務情報として理念や歴史なども評価対象となります。つまり、採用からのインナーブランディングを推進していくことは、必然的にサステナビリティ経営を推進していくことにもなるのです。
数値化が採用の強みになる
差別化しにくい採用の市場で、自社の強みを明確にすることがとても重要です。そのためにも、企業の取り組みを数値で示すべきなのです。まだまだのような企業の取り組みであっても、数値で示すことで、より具体的に力強く応募者にアピールできます。
それらが従業員の多様性にもつながり、これまで接点を持つことができなかった属性の人たちを集めることにつながります。
そもそもの採用のミスマッチの原因
そもそも、採用でミスマッチが起きる理由は、圧倒的に情報の非対称性があるからです。
応募者に対して企業側から開示する情報が少なければ、当然ミスマッチは起こりやすくなります。応募者が企業の価値観などに共感して応募するためには、企業側からの情報開示が必要です。
情報開示の一つとして「〇年連続黒字」などを伝えている企業もありますし、これらのデータもとても重要です。しかし、より具体的な社会価値を広く開示しなければ、応募者の共感は得られませんし、他社との差別化も生まれません。
とくに、社会的価値が重要視されている昨今では、サスティナブル経営の面から応募者にアピールしていく必要があります。
インナーブランディングで選ばれる企業になる
社会貢献や存在意義など、昨今では企業の社会との関わりがとても重要になっています。そのため、インナーブランディングにおいても採用においても、サスティナブル経営やSDGs経営は欠かせない要素です。
サスティナブル経営を無視してしまえば、企業としてのブランド力も落ちてしまいますし、採用においても必然的に「選ばれない企業」になってしまうでしょう。だから、インナーブランディングで中から固めていかなければいけません。
今後の経営においても、採用活動においても、サスティナブル経営を意識した取り組みを行っていきましょう。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランスで5度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。