前提として、私たちむすび株式会社では、採用ブランディングにおける動画の制作を積極的には勧めていません。もちろん一定の条件を満たしている企業では大いに勧めております。私たちの採用クリエイティブにおける考え方は、以下の記事で解説しているので、そちらも合わせて参考にしてください。
今回は、積極的には勧めていないという前提で、採用ブランディング動画の効果や、動画を制作した場合に伝えるべき内容について解説します。
採用ブランディングにおける動画制作に効果はあるのか?
採用ブランディングにおける動画制作の効果として、よく以下の4つが挙げられます。
- 知名度の向上
- イメージ向上
- 応募者に安心感を与える
- ミスマッチの防止
これらの効果はあります。動画制作自体に、全くメリットがないわけではありません。
「それなら結局、動画を作った方が良いのではないか?」と思われるかもしれませんが、これらの期待される効果は、他の制作物でもできてしまうのです。
知名度の向上は、そもそも映像作ったから知名度が向上するのではなく、採用プロモーションにおける出稿量の違いにも影響されます。安心感については、他の場面で安心感を出せれば問題ありません。例えば映像のなかで伝えられる安心感よりも「10年連続増収増益」であれば、後者の方が安心感を得られる場合もあります。
もちろん、何かのきっかけで動画がバズれば大きな効果が見込めます。しかし、バズるバズらないというのは、宝くじのようなもので、確実性は高くありません。
動画が印象的に残るかどうかは結局映像の出来次第
「動画をつくれば印象に残しやすい」という観点から、採用ブランディングにおいて動画制作を検討する企業もいるでしょう。しかし、時流に乗った安易な制作は危険です。
動画で印象に残せるかどうかは、結局映像の企画や出来次第です。さらに、映像の出来には、100もあればマイナスもあります。100か0かではなく、印象を落とすマイナスもあるのです。
このような大きな波があるなか、戦略的に動画を構築し、採用ブランディングの本質を理解して動画を制作できる会社は、本当に少ないと言えます。
まして、私たちの採用ブランディング・プログラムを落とし込むまでの動画制作ができる企業やフリーランスは本当に少ないのです。
SNSに投稿する動画の効果
昨今では、企業の人事や広報がTwitterやTikTokに動画を投稿しています。このような動画は、自社の強みを出すという視点では、効果的だと考えています。
例えば、自社の採用コンセプトの上位に「楽しい」「雰囲気が良い」といった強みがあるならば、TikTokに投稿されているような、楽しい動画をアップしていくのは良いでしょう。
ただ、あくまで「強みをはじめ、戦略に沿っているか」が重要です。なんとなく手探りで「他の企業がやっているから真似してみよう」という程度では、効果を感じられないものになってしまうでしょう。
採用ブランディング動画で伝えるべき内容とは?
仮に私たちが採用ブランディング動画をプロデュースするとするならば、用途によっても異なりますが、その会社のプロジェクトを切り取った動画を制作します。
一般的な採用動画、例えば説明会などに使用する場合なら、社長や社員が出てきてインタビューをするというのがよくある例です。
ただ、いずれにおいても「どちらが正解」とは言い切れません。
大事なのは、パンフレットでもHPでも伝えられなかったことを伝えるという考え方です。パンフレットやHPで伝えていることをあえて動画で伝えても、大きな効果は生まれにくいです。
また、動画は、パンフレットやHPと異なり、尺があります。大体、10~15分ほどです。その限られた時間のなかで、何を伝えるかを、テーマを絞らなければいけません。
あれもこれも……と動画に入れてしまうと、結局何も伝わらない、印象に残らない動画になってしまいます。もし動画を作るなら、何か一つにテーマを絞り、一点突破で伝えていく方が、効果に繋がるでしょう。
採用ブランディング動画は手法として有効か?
用途や動画の出来次第にもよりますが、手法としては条件が揃っている企業は行う価値があります。
動画があることで、プラスの効果に働く可能性もありますが、動画を制作しないからと言って、マイナスに働くこともありません。
では、何を軸に動画を制作するか決めればいいのでしょうか。それはズバリ予算です。クオリティの高い動画を制作するには、数百万円ほどの予算がかかります。
1本数百万円の予算を出せる企業であれば、採用ブランディング動画を制作しても良いでしょう。しかし、先述したように、動画の効果は他の制作物でも得られます。また毎月数十万円の予算を捻出できるのであればパンフレットも必要ありません。
費用を抑えて、効率的に採用を行うのであれば、まずはホームページやパンフレットを制作し、その上で、動画を制作する方が圧倒的に費用対効果の面では高いのです。
採用ブランディング動画は+αの域を出ない
採用ブランディング動画は、効果が全くでないわけではありません。しかし、1本の動画で採用課題をいくつも解消するものではありません。
あくまで採用ブランディングにおける動画の役割は、ホームページやパンフレットの制作を差し置いてまで行うものではないのです。
また、私たちの採用ブランディングは、動画を制作しなくても十分な効果を発揮できます。
もちろん、動画を作る・作らないの判断は個々の企業の自由です。しかし、採用ブランディングにおいて、動画はマストではありません。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランスで5度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。