採用は、企業にとって常に大きな課題です。
特に中小企業は、採用に苦戦している企業が多いのではないでしょうか。そんなことがもう10年以上も続いています。しかも年々採用難は拍車がかかっています。これからもそうなります。
そこで今回は改めて、採用の課題を洗い出していきます。
その上で「なぜ採用ブランディングが重要なのか」「なぜ採用ブランディングが課題を解決できるのか」についても、解説していきます。
中小企業が常に悩まされる採用の課題は主に3つ
採用の課題は、今も昔も大きく変わりません。
募集すれば何人も集まるような大手企業は別ですが、中小企業にとっての採用は、常に課題となっているでしょう。
以下では、常に抱える採用の課題について、改めて解説していきます。
人材確保が難しい採用難
採用難というのは、ここ数年で言われている言葉ではありません。
いつの時代も採用難です。
私たちが知る限り、コロナ禍が収束し始めたあたりやリーマンショックの時位しか、採用しやすかった時期というのはなかったように思います。
では、これから採用難ではなくなるか?と言えば、決してそんなことはありません。
今後に関しても、採用難は続くと考えられます。
定着率が低い
「定着率」も採用の大きな課題です。
一般的に、新卒・中途問わず、新入社員は「3年以内に3割辞める」と言われています。
しかし、この原因は企業側にあるのです。
いつの時代も、企業側は母集団を集めて、集まった中から選ぶ方法しか行っていません。
人数が集まれば、その中から「誰が優秀か?」という視点だけで選びます。
一方で、学生や転職者は自分の経験を棚卸して自己PRなり、志望動機なり、価値観を作ります。
そこで、齟齬が生まれているのです。
求職者は比較的「自分に合っているかどうか」が選社軸に入っているのに対して、会社は「使える人材かどうか」で選んでいるために、お互いに齟齬が生じ、退職されてしまうのです。実際、弊社の調査でも、他企業の調査でも、選社軸には必ずと言っていいほど「社風があっているか」、「仕事内容があっているか」、「働いている人とあっているか」などの項目が入ってきます。
大手企業と同じ手法を真似ている
先述したように、いつの時代も採用難です。にも関わらず、多くの企業は大手企業の採用方法を真似てしまっています。
大手企業は、採用マーケティングのような方法で、数字だけを見て採用を行っていても成功しますが、中小企業に関しては別です。
自社ならではの方法を考えなければ差別化が生まれず、もし採用できてもミスマッチが起きてしまいますし、同じような条件であれば、中小企業よりも大手企業に行ってしまうでしょう。
採用の課題解決には理念共感が不可欠
採用で最も重要なのは、理念共感と言っても過言ではありません。
会社の理念というのは、言い換えればその会社の価値観ですから、そこにマッチするかどうかというのは、重要なポイントだと言えます。また理念共感で採用を行うから、差別化になるのです。なぜなら理念は各企業ごとにまったく違うものだからです。
しかし、不思議なことに、どの企業も理念があるにも関わらず、理念の説明をしないのです。
ただ、内定者は必ずと言って良いほど、会社の理念を見て、理念に共感しています。
これは弊社の調査でも現れています。内定者の7割は内定先の企業理念に共感しています。しかも共感した企業には2人に1人以上が「期待感」と「信頼感」を抱きます。つまり「ブランド」が出来上がっていくのです。
そこで企業側がすべきことは、自社でどのような人材が欲しいかを伝えることです。企業側自ら欲しい人材について説明しなければ、ミスマッチを起こす可能性が高くなってしまいます。
理念共感で採用した人材は活躍する
企業側が理念共感で採用するという方法を行えば、学生や転職者とマッチしやすくなります。
先述したような「使える人材かどうか?」というような上から目線で選ぶのではなく、「自社とマッチするのはどのような人材なのか?」で考えるべきなのです。
そして、理念共感でマッチした人材というのは、定着しやすい上に活躍人材になりやすいということが、私たちが手掛けてきた企業のデータを見ても、明らかになっています。過去4回、母集団を変えてビジネスパーソンに調査を行っていますが、「いずれも入社時の理念共感度合いが高いほど、活躍しやすい」という統計的な因果関係があることがわかっています。
市場で考える採用では成功しない
私たちが知る限り、ほとんどの企業は従来の解釈でのマーケティングの発想でしか採用を行っていません。従来の解釈と言っているのは、本質的なマーケティングというのは全く異なるからです。従来の解釈というのはつまり、近視眼的で、市場にのみ目を向けるという意味でのマーケティングです。
常に、広い市場で受け入れられる方法のみを行おうとしているのです。
特に日本においては、「どのようにしたら若者にウケるか」という観点しか見ていない傾向にあります。だから採用の方法も、市場に応えるようなものになってしまうのです。
しかし、私たちの考える採用は違います。
「市場」ではなく、やはり「理念共感」。多くの若者にあたるような観点ではなく、刺さるべき人に刺さらなければならないのです。
また10-20人程度年間で採用する企業にとっては、企業規模に関係なく、上記のようなマーケティング視点はいらないと言えます。なぜならそこまで母集団を集める必要が本来はないからです。市場のことは考えず、ひたすらに理念共感を貫くことで、採用は劇的に変わります。
採用ブランディングで採用の課題を解決できる
採用の課題を解決するために私たちが考えたのが、採用ブランディングという方法論です。
具体的な採用ブランディングのやり方については割愛しますが、採用ブランディングは採用マーケティングや、従来の採用手法と大きく異なります。
従来の手法と異なるため「本当に採用できるのか?」と疑問を感じる企業もいるかもしれませんが、反対を言えば、従来の手法を続けているから採用に苦戦するのです。
私たちが手掛けてきた企業では、ほとんどの企業が採用に成功しているというデータがとれています。
※「ほとんど」としているのは、決めたとおりのプログラムで行わない場合に成功率が下がるため
もし今採用に課題を感じているのであれば、ぜひ改めて自社の採用のやり方を見直してみてください。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランスで5度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。