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2025.04.09

採用を“誰が決めるか”が曖昧だと失敗する?意思決定の仕組みと社内の価値観を整える方法とは

採用を“誰が決めるか”

採用活動では「この人を本当に採用すべきか」という判断が、組織にとって非常に重要です。しかし、誰が最終的な決定を下すのかが明確になっていない企業では、面接評価や採用スピードにブレが生じ、結果的にミスマッチや候補者離脱といった問題が発生しやすくなります。

現場、人事、経営と関係者が多くなるほど、意思決定の基準やプロセスは曖昧になりがちです。この記事では、「採用を誰が決めるのか」という問いに向き合い、意思決定の仕組みと採用の軸を整えるための実践的な考え方を紹介します。

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採用を「誰が決めるか」が曖昧だと組織全体に混乱を生

採用における最終判断者が明確でないと、現場や人事で評価のズレが生まれ、候補者対応にも一貫性がなくなります。意思決定の遅れは候補者の離脱を招くだけでなく、社内の納得感や責任の所在にも影響します。

以下では、判断者が曖昧なことで起こりがちな問題について具体的に見ていきます。

面接官ごとに判断が異なり、選考がブレる

判断基準が共有されていないと、面接官ごとに「良い人材」の定義が異なり、ある面接では高評価、別の面接では不採用という事態が起こります。このような状態では候補者に与える印象にもズレが生じ、「一貫性のない企業」という印象を持たれることもあります。

選考結果が感覚頼りになると、組織としての採用の質が下がるだけでなく、評価に納得できない現場の混乱にもつながります。

決裁プロセスに時間がかかり、候補者が離脱する

誰が最終的に採用の判断を下すのかが曖昧だと、面接後の意思決定に時間がかかり、候補者を待たせることになります。特に優秀な人材ほど複数の企業と選考が並行しているため、スピード感のない対応は他社への流出を招くリスクが高まります。

迅速な判断ができない企業は、候補者から「決断力がない」「現場が混乱している」という印象を持たれてしまいがちです。

入社後のミスマッチが増え、現場との摩擦が生じやすい

誰がどの観点で採用を決めたのかが不明確なままだと、「なぜこの人を採ったのか」が社内で共有されず、入社後に現場とのギャップが生まれます。

特に現場が選考に関わっていない場合、「現場ニーズを反映していない人材が配属された」と感じられ、育成や定着にも悪影響を及ぼします。採用は入社後の活躍までを見据えて判断すべきであり、その責任の所在が曖昧では組織的な連携も難しくなります。

採用の意思決定プロセスには「設計」と「共有」が必要

用の意思決定プロセスには「設計」と「共有」が必要

採用の最終判断を「誰が」「どの基準で」「どのタイミングで」行うのか、あらかじめ設計し、社内で共有しておくことで、選考はスムーズかつ納得度の高いものになります。

個人の直感に頼らず、組織で選考を進めるためには、明確なプロセスと基準が必要です。以下では、実務に落とし込みやすいプロセス設計のポイントを解説します

役割分担と最終決裁者を明確にしておく

採用活動には複数の関係者が関与しますが、「誰が評価し、誰が決めるのか」が明確でなければ、全体の流れが滞ります。

たとえば、人事が母集団形成と一次選考、現場が技術評価、経営が最終判断というように、あらかじめ役割を定めておけば、スムーズに責任を分担できます。最終決裁者が明確であれば、判断がぶれることもなく、意思決定も迅速になります。

評価基準を共通化しておくことで判断が揃う

複数の面接官が評価に関わる場合、それぞれが違う基準で判断していては採用の精度が下がります。スキル、マインド、カルチャーフィットといった評価軸を事前に定義し、共有しておくことで、各面接官の評価を比較・集約しやすくなります。

共通基準があることで、個人の好みや思い込みによる選考のブレも防げます。

面接後の振り返りや連携の場を設ける

面接後に各担当者がバラバラに評価するだけでは、全体としての合意形成が難しくなります。短時間でも良いので、面接後に関係者が集まり、「どう感じたか」「どのポイントを評価するか」を話し合う場を設けることで、判断に一貫性が生まれます。

こうした連携の積み重ねが、組織としての採用判断の質を高めるポイントです。

判断のズレを防ぐには、社内に“採用の軸”を持つことが重要

選考基準や価値観が社内でバラバラなままでは、いくらプロセスを整えても、根本的なズレを防ぐことはできません。「なぜこの人を採るのか」「私たちにとっての“良い人材”とは何か」という軸が組織に共有されているかどうかが、採用活動の質と一貫性を大きく左右します。

この軸がなければ、採用の属人化やミスマッチを繰り返すことになります。以下では、採用の判断軸を社内に持つことの重要性と、整備されていない場合に生じるリスクを解説します。

候補者選定が個人の好みに偏る

採用に関わる担当者が、それぞれの個人的な印象や好みで候補者を評価していると、組織としての一貫した採用ができません。たとえば「話しやすいから良さそう」といった直感的な判断だけで合否を決めてしまえば、入社後に期待とのギャップが生まれる可能性があります。

選定基準が言語化されておらず、誰の視点で見ても基準が曖昧なままでは、採用のばらつきは避けられません。共通の「採用のものさし」を持つことが、長期的な組織づくりにつながります。

現場と人事で“いい人材像”が食い違う

よくある課題の一つが、人事と現場の間で「良い人材」の定義がずれていることです。人事は組織文化との相性や長期的なポテンシャルを重視していても、現場は即戦力やスキル面を最重視する傾向があります。このズレがあるまま選考を進めると、面接結果に納得感がなくなり、判断が遅れる原因にもなります。

採用の軸を組織で共有し、「私たちはどんな人と働きたいのか」を言語化しておくことで、こうした食い違いを未然に防ぐことができます。

採用活動の振り返りができず、改善しにくくなる

採用基準が明文化されていないと、「なぜこの人を採ったのか」「採らなかったのか」が記録にも残らず、後から振り返ることができません。その結果、入社後のミスマッチがあっても原因がわからず、同じような失敗を繰り返してしまいます。

判断の根拠が明確であれば、「うまくいった理由・いかなかった理由」を共有でき、次回の採用活動に活かすことができます。改善のためには、基準が存在し、それをもとに振り返る文化が欠かせません。

採用判断を「属人化」から「組織の判断」へ変えるには

採用判断を「属人化」から「組織の判断」へ変えるには

採用を成功させるためには、優れた判断者を一人用意するのではなく、組織全体で“ブレない判断”ができる体制をつくることが重要です。属人的な選考に頼る状態から脱却し、組織としての価値観や評価基準を共有することによって、採用の質は大きく改善されます。そのためには、意思決定プロセスの設計と、採用の軸となる考え方を社内に浸透させることが不可欠です。

「誰が決めるか」だけでなく、「何を基準にどう決めるのか」という視点で仕組みを見直すことで、選考はより合理的かつ信頼性の高いものになります。候補者にとっても社内にとっても納得度の高い採用を実現するには、価値観の共有と判断の仕組み化が必要です。採用の意思決定を属人化から組織化へと進化させることが、これからの時代の採用力を支えるカギとなるでしょう。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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