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2025.04.23

採用ROIを高めるには“内側の整備”が不可欠

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採用活動の費用対効果、すなわち「採用ROI(投資対効果)」は、多くの企業が関心を寄せるテーマです。しかし、求人広告の費用や面接にかかる時間など、目に見えるコストだけを管理していても、本当の意味で採用ROIを高めることはできません。

重要なのは、組織の内側にある“設計”や“価値観の共有”といった、数字では見えにくい部分の整備です。

本記事では、採用ROIを正しく捉え、改善していくために必要な視点と、インナーブランディングの役割について解説します。

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採用ROIとは何か?なぜ今重視されているのか

採用活動におけるROIは、単なるコスト削減や効率化とは異なり、戦略的な人材獲得に向けた“投資判断”を行うための指標です。

採用活動を経営視点で捉え直す第一歩として、まずはこの概念の正確な理解が必要です。

採用ROIの定義=「採用成果÷採用コスト」

採用ROIとは、「採用活動で得られた成果(例:入社人数・活躍度)を、かけたコストで割ったもの」と定義されます。

たとえば、500万円のコストで10人を採用し、うち8人が活躍している場合、その活動のROIは比較的高いと判断できます。数字として可視化することで、採用のどこに投資すべきか、どこが非効率かが見えてきます。

短期的な費用対効果だけでは見えない問題もある

広告費用や紹介料の比較など、短期的なROIに注目するあまり、長期的な“活躍”や“定着”といった視点が抜け落ちてしまうケースもあります。採用は一過性のイベントではなく、入社後のパフォーマンスを見据えた「人材投資」です。

その本質を見誤ると、数値の表面的な変化ばかりを追い、施策の質が低下してしまうリスクがあります。

ROIが低下する原因は、プロセスより“設計”にある

採用プロセスに問題があると考える企業は多いですが、実際には「どんな人を採るか」「どんな基準で判断するか」といった設計段階のズレが、ROIを下げていることが少なくありません。

どれだけ選考を効率化しても、評価基準がぶれていたり、そもそもターゲットが明確でなければ、結果的に定着率や活躍度が下がり、投資効率も悪化します。

採用ROIを構成する3つの視点

採用ROIは、単なる費用と成果のバランスではなく、採用活動全体を構成する要素に分解して捉えることで、本質的な改善点が見えてきます。

母集団の質と量(集客の効率性)

まず重視すべきは、どれだけ「適切な人材候補」を集められているかです。数だけを追えば広告コストは膨らみ、質だけを追えば集客力が不足することもあります。

採用ROIを高めるには、自社の価値観や求める人物像に共感する候補者をいかに引き寄せられるかが鍵です。これはまさに「自社の魅力をどう発信しているか」というブランディングの問題とも直結します。

選考精度とミスマッチ率(評価の的確性)

候補者を集めたあとの選考において、評価基準がぶれていれば、ミスマッチ人材を採用してしまうリスクが高まります。評価軸が属人的になっていたり、部門ごとに“求める人材像”が違っていたりすると、採用活動そのものの整合性が崩れます。

結果として、内定辞退や早期離職が増加し、ROIは大きく下がってしまいます。

入社後の定着と活躍度(中長期のパフォーマンス)

本当に見るべきROIは、入社後の“活躍”と“定着”です。採用時には優秀に見えても、企業文化と合わなかったり、適切な配置や育成が行われなかったりすれば、成果を出すことは難しくなります。

採用はあくまでスタート地点であり、長期視点での「人材活用」と一体化して初めて、真のROIが見えてきます。

採用ROIが低い企業に共通する“価値観のズレ”

数字を改善しようとするあまり、企業内の“価値観の不一致”が見過ごされているケースは少なくありません。実はこのズレこそが、採用ROIを根本から下げる原因になっています。

採用ターゲットがあいまいで、集客が分散している

「どんな人を採りたいか」が曖昧なまま求人を出すと、メッセージがぼやけ、集客の質も量も中途半端になります。

その結果、採用単価は高騰し、フィット率も下がるため、ROIは自然と低下していきます。ターゲット像を明確に定義することが、集客効率の改善につながります。

評価項目が属人的で、判断がブレている

評価の軸が部門や担当者によって異なっていると、選考の精度が下がり、採用後のミスマッチが増えます。「どんな価値観を持つ人を、どのように見極めるのか」が社内で統一されていない状態では、ROI向上のための施策も場当たり的になります。

活躍の定義が組織で揃っておらず、定着しない

「活躍している」とされる基準が人によって異なれば、採用の成功指標自体が曖昧になります。その結果、評価や育成がずれ、せっかくの採用が十分に成果につながらないまま終わってしまいます。

活躍の定義を明文化し、組織全体で共有することが、採用ROI向上のカギとなります。

採用はコストではなく“投資”であるという文化を育てる

採用活動は経費ではなく、未来の人材基盤を築くための“投資”です。その投資効果を最大化するには、「どんな人を、どのような価値観で迎え入れるか」が組織全体で共有されている必要があります。

インナーブランディングによって、採用観や人材観を社内に浸透させることは、長期的な視点で見たときのROIを高める最も本質的なアプローチです。採用の内側を整え、価値観の共有を進めることで、初めて数字にも表れる成果が得られるのです。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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