インナーブランディングを進めていくなかで大きな課題は「プロジェクトが進まない」ことです。
インナーブランディングを始めたからといって、順調に理念が浸透していくわけではありません。
とくに中小企業の場合、メインの仕事に時間をとられて、インナーブランディングの一つひとつの仕事に時間を割けないケースもあるでしょう。
そこで今回は、インナーブランディングを進めていくなかでの課題や課題の解決方法について解説します。
インナーブランディング一番の課題は「進まない」
インナーブランディングで最も挙がる課題点は「進まない」です。ほとんどの場合、インナーブランディングのプロジェクトチームは、いくつかの部署から活躍人材を集めて作ります。
しかし、当然ながらプロジェクトチームに選任された社員にも、メインの業務があります。そのため、メインの仕事が忙しくてインナーブランディングが進められないのです。
理念に合わせてマニュアルを変えたり日報のフォーマットを変えたり、インナーブランディングのなかにはこのような小さな業務もありますが、メインの仕事が忙しいと、これらの改善も進んでいきません。
当然、プロジェクトチームにはリーダーのような進捗を追いかける役割を担う人もいますが、なかにはリーダーが忙しくて進捗を追いかけることもできないなんてケースもあります。
「忙しくてインナーブランディングが進まない」の解決策
プロジェクトチームにインナーブランディングをしっかり進めてもらうためには、経営者の適切な配慮が必要です。ただ「進めてください」とはたらきかけるのではなく、彼らがインナーブランディングに注力できる環境を用意してあげなければいけません。
解決策として最も良いのは、仕事量を調整してあげることです。しかし、とくに中小企業では、仕事量の調整は難しいでしょう。
仕事量の調整が難しい場合には、プロジェクトチームに選任された社員が所属する部署の全員に、インナーブランディングについて共有してください。「インナーブランディングのチームとして入ってもらうから、注力できるように協力してあげてほしい」と部署の協力を仰ぎましょう。
共有されないことによる停滞
インナーブランディングが進まなくなる原因の一つとして、異動してしまうメンバーによる共有漏れがあります。
比較的規模間の大きい企業の場合、プロジェクトチームのリーダーとして選任した社員が異動してしまうケースがあります。リーダーが異動してしまえば、当然他の社員をリーダーとして選任しなければいけません。
しかし、新しく選任したメンバーは、これまでの経緯やインナーブランディングの進捗状況について理解できていない状態です。このような場合に、適切な共有ができていないと、インナーブランディングの進みは停滞します。
「詳しい話は現場で引き継いでもらってください」というような引継ぎではなく、しっかりと橋渡ししなければいけません。
忙しくて手が回らない企業にインナーブランディングは向いていないのか?
ここまでの内容を見て「うちは仕事量が多く社員も少なく、インナーブランディングをスムーズに進行させられない可能性があるから、今はまだ実行しない方が良いかもしれない」と思ってしまう企業もあるかもしれません。
結論から言えば、その考えは間違いでもなければ正解でもないです。
なぜなら、インナーブランディングにおいて適切なタイミングというのがないからです。
インナーブランディングを含むブランディングにおいて「どのタイミングだからやるべき」という決まりはありません。自社で「やろう」と思ったときにやるのが、好ましいタイミングです。
そのため「うちはまだやらない方が良い」と思うのであれば、それも一つの答えといえます。
「今はまだやらない」ならば「いつやるのか?」
「うちはまだやらない方が良い」というのも一つの答えだと解説しましたが、一つ注意点があります。
それは「今やらないならばいつやるのか?」という点です。
上記で解説したように、インナーブランディングに適切なタイミングはなく「やろう」と思ったタイミングで問題ありません。
しかし「インナーブランディングをやろう」と思えるタイミングは、そう多くはありません。「今はまだやらなくて良いだろう」と考えて、そのままになってしまうケースも見られます。
そのため、「やろう」と思ったタイミングで動き出してしまうのが、適切なタイミングともいえます。
インナーブランディングを「進まない課題」で躊躇してはいけない
従業員数の少ない中小企業の場合、インナーブランディングの「進まない」課題は、どうしても生じやすいです。しかし、だからといってインナーブランディングを躊躇わないでください。
なぜなら、従業員数が少ないうちにインナーブランディングを進めてしまった方が、後々楽になるからです。従業員が多くなればなるほど、理念は浸透しにくくなります。
また、インナーブランディングのメリットをしっかり理解していれば「後回しにしよう」という考えは出てこないはずだと弊社は考えています。
より具体的にインナーブランディングのメリットについて知りたい場合は、ぜひ一度ご相談ください。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。