インナーブランディングの実施においてクレドの策定が必要かどうかについて解説します。
ビジョン・ミッション・バリューを策定するので、「クレドを策定する必要はあるか?」と考える企業もあるかもしれません。
しかし、実際に私たちがインナーブランディングをサポートした企業のなかにもクレドまでつくりこんでいるケースはあります。とはいえ、クレドの策定は必須ではありません。
本記事では、クレドを策定すべきか、私たちの考えを解説します。
クレドの重要性
インナーブランディングを置いておき、クレドの側面から考えていくならば、とても重要なものといえます。
クレドは「どのような行動を社内ですべきか?」「どのような行動が推奨されているのか?」といった行動指針ですから、「ある・なし」でいうならばあるにこしたことはありませんし、策定することをおすすめします。
とくに飲食・建設・介護・ホテルなどの現場で人が動く職種はクレドを策定すべきです。お客様をめがけて動く業種に関しては、クレドを決めておくと現場の人間が動きやすくなり、行動も統一されていきます。(リッツカールトンのクレドはあまりにも有名ですね)
反対に行動指針がないと、現場の人間は何を軸に動いて良いのかわかりません。「あの人の接客は良い」「あの人のサービスは不満」のように、サービスが属人化しないためにもクレドを策定した方が良いのです。
バリューとクレドの違い
インナーブランディングを実施するなかで「ビジョン・ミッション・バリュー」を策定しますが、ここでクレドと混同されやすいのがバリューです。
なぜなら、バリューは「ビジョン・ミッションを達成するための具体的な行動」ですから、「行動」という部分で近しいように思えてしまうのです。
しかし、バリューとクレドは明確に分けられます。
バリューは「お客様に提供する価値、行動」であり、クレドは「社内で統一する意識、行動」です。
では、どのように分けるのか、実際に私たちがサポートした『株式会社ギフトホールディングス』の例を見てみましょう。
『株式会社ギフトホールディングス』では、バリューを以下のように定めています。
- 極上品質
- 一貫物流
- 日々清潔
- 気配細部
- 笑顔活気
- 常連厚遇
- 職人追及
- 超絶空間
- 精神研鑽
これらは、いずれもお客様に対して何を提供するか?を定めたものです。
一方で、クレドは以下のように定められています。
- 礼:私たちはすべての人に、謙虚な心を持って接します。
- 心:私たちはお客様と目線を合わせます。
- 能:私たちは手の空いた時には「何かやることありますか?」と聞きます。
- 明:私たちは前向きな言葉で行動を変えます。
- 学:私たちは日々変化を恐れません。
- 志:私たちは大きな目標を持ちます。
- 導:私たちは仲間の成長が喜びです。
- 翔:私たちはお互いに助け合い、褒め合い、感謝します。
上記のようにクレドは「ギフトの社員としてどのような行動をすべきか?」が定められているのです。
このようにバリューとクレドを分けて細かく決められるほどに、クレドとバリューには大きな違いがあります。
インナーブランディングでクレドは策定すべきか?
インナーブランディング実施においてクレドを策定すべきか?については、一概にどちらとも言えません。
どちらにもメリット・デメリットがあるからです。
上記で『株式会社ギフトホールディングス』のクレド・バリューを紹介しましたが、すべて覚えるとなればどうしても時間がかかってしまいます。
ですから、理念浸透を早く進めたいのであれば「ビジョン・ミッション・バリュー」だけ策定する方向で良いでしょう。
ただし、企業の価値観をしっかり伝えて強固な文化にする目的なのであればクレドまで作りこんだ方が良いです。
『株式会社ギフトホールディングス』においては、クレド・バリューを決めたにも関わらず高速で浸透活動をまわしたために売上が約20倍にもなりました。同じように高速で理念浸透活動をおこなえる、または粘り強く時間をかけて文化を強くしたいと考えているならば、クレドまで作ると良いでしょう。
京セラのフィロソフィから学ぶ「数の強さ」
「理念浸透を早く進めるためにはクレドまで作る必要はない」と解説してきましたが、決して伝える内容が少なければ良いわけではありません。むしろ、多い方が良いと思われるケースもあります。
例えば、京セラのフィロソフィを見てみてください。京セラでは60項以上が掲げられています。
これだけあれば「ビジョン・ミッション・バリュー」で伝えきれなかった細部まで伝えきれるでしょう。確かに覚えるには時間がかかりますが、もしこれをすべて覚え、実践できるようになれば、どこにも真似できないほどの強固な文化になります。
クレドは自社の文化や想いに合わせて策定すべき
今回解説したように、インナーブランディングの実施に合わせてクレドを策定すべきかは、自社がどうありたいかによります。
とにかく早く理念浸透を進めるのであれば、クレドまで作る必要はありません。ある程度の範囲まで理念が浸透した後にクレドを策定する方法も良いでしょう。
反対に、インナー・ブランディングを実施するタイミングでクレドまで作りこみ、文化を強くする方法もあります。
ですから、「自社がどうありたいか、今何をすべきか」などの想いが大切です。
弊社では基本的に「ビジョン・ミッション・バリュー」までを策定しますが、希望があればクレド策定のサポートまでいたします。
企業の文化に適した内容を策定しますので、ぜひインナーブランディングを実施する際にはご相談ください。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナー・ブランディング まず教育、そして採用、業績アップ。鉄板の好循環をつくる」(セルバ出版)。