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レポート

2025.04.16

採用チェックリストで見える本当の課題|表面的な改善で終わらせないために社内で整えるべきこと

採用チェックリスト

「求人を出したけれど応募が来ない」
「面接での判断がいつもブレてしまう」

採用活動に課題を感じている企業の多くは、外部施策よりも“内側”に問題を抱えているケースが少なくありません。媒体選定や面接手法の前に、まず社内で整えるべき項目があるのです。

そこで有効なのが「採用チェックリスト」という考え方です。ただし、チェックすべきは応募数や合否率ではなく、採用活動を支える“社内の準備”です。

本記事では、採用活動を仕組みとして捉え直すために欠かせない社内チェックリストのポイントと、それを機能させるために必要なインナーブランディングの考え方をご紹介します。

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採用活動には、見落とされがちな“内側の整備”が必要

採用がうまくいかないとき、多くの企業がまず見直すのは求人媒体や面接の手法です。しかし実際には、こうした「外向きの対策」よりも、「社内の整備不足」が原因で採用が機能していないケースが少なくありません。

面接官の準備、評価基準の共有、候補者への情報提供など、社内の足並みが揃っていなければ、優秀な人材と出会っても成果につながらないのです。ここでは、採用活動において特に見落とされやすい“内側の課題”について掘り下げていきます。

採用活動の失敗は「外」より「内」に原因があることが多い

採用がうまくいかないと感じたとき、つい広告出稿やエージェントの変更といった外部施策を検討しがちです。しかし実際には、面接官が評価軸を理解していない、求人票が社内で十分に練られていない、内定後のフォローが形骸化しているといった“社内の未整備”が根本原因となっていることが少なくありません。

採用成功のためには、まず社内の認識を揃え、基本的な準備が整っているかを振り返る必要があります。

準備不足が候補者に伝わり、辞退やミスマッチにつながる

採用活動における準備不足は、候補者に敏感に伝わります。たとえば、面接中に企業の事業内容やポジションの説明が曖昧だったり、選考スケジュールがたびたび変更されたりすると、候補者は「本当に自分を求めているのか?」と不安になります。

その結果、内定を辞退されたり、入社後にミスマッチを感じて早期離職するリスクが高まるのです。候補者にとっては、企業の対応すべてが“その会社らしさ”として判断材料になります。

まずは自社の現状を“見える化”することが改善の第一歩

問題の本質を見つけるには、まず自社の採用活動がどのように設計・運用されているのかを見える化する必要があります。何ができていて、何が不足しているのかを明らかにすることではじめて、具体的な改善策が見えてきます。

チェックリストを使って現状を点検することで、曖昧になりがちな「内側の課題」を言語化し、社内で共有できるようになります。

採用に必要なチェックリスト10項目

チェックリスト10項目

ここでは、採用活動の質を高めるうえで社内で整えておきたい10のポイントをチェックリスト形式で紹介します。いずれも当たり前のようでいて、実はできていない企業も少なくありません。

採用力を高めたいと考えるすべての組織が、まず見直すべき内容です。

① 採用の目的とポジションの役割が明確か

「なぜこの採用が必要なのか」「その人はどのような役割を担うのか」を明確に言語化できているでしょうか?目的や期待が曖昧なまま採用を進めると、求人票の内容や面接での説明にブレが生じ、候補者にも混乱を与えてしまいます。

② 採用ターゲットが定義・共有されているか

どんなスキルやマインドを持つ人を採りたいのか、ターゲット像は明文化され、現場と人事で共有できているでしょうか?「いい人がいれば」という曖昧なままでは、判断が属人化し、選考に一貫性がなくなります。

③ 求人票や採用サイトに“自社らしさ”が反映されているか

求人票や採用ページは、候補者との最初の接点です。自社の理念や文化、働き方の特徴などを盛り込み、「この会社らしさ」が伝わる表現になっているかどうかが、応募の質に大きく影響します。

④ 面接官が採用目的と評価基準を理解しているか

面接官が何を基準に評価するのかを理解していないと、質問や対応に一貫性がなくなり、選考そのものの信頼性を損ねてしまいます。事前に目的や評価項目を共有する場を設けておくことが不可欠です。

⑤ 評価項目がスキルだけでなくカルチャーフィットも含んでいるか

スキルだけで採用してしまうと、組織との相性でミスマッチが生じやすくなります。「どんな価値観や姿勢の人と働きたいか」という観点も含めて、評価項目が設計されているかを確認しましょう。

⑥ 採用スケジュールが現場・人事で共有されているか

採用活動は複数の部門が関わるチーム戦です。スケジュールの遅れや混乱を防ぐためには、現場と人事の間で工程をしっかり共有し、日程や役割分担を明確にしておく必要があります。

⑦ 選考結果のフィードバック体制が整っているか

面接後の評価が曖昧だったり、記録が残っていなかったりすると、次の選考に活かせず、属人的な判断が繰り返されてしまいます。候補者ごとの評価を記録し、チーム内でフィードバックを行う体制が重要です。

⑧ 候補者への対応が一貫しているか(誰が話しても同じ印象か)

面接官や担当者によって対応がバラバラだと、候補者に不安を与えてしまいます。誰と接しても「この会社は一貫している」「考え方が揃っている」と感じられることが、信頼獲得につながります。

⑨ 内定後のフォローが“入社後”を見据えているか

内定通知を出したあとのフォローは、入社後の定着にも大きく関わります。単なる形式的な連絡ではなく、「どうすれば安心して入社できるか」「組織との接点をどう増やすか」を考えておくことが重要です。

⑩ 採用の振り返りや改善が定期的に行われているか

採用活動は「やって終わり」ではなく、毎回の結果を振り返り、改善を繰り返すことで精度が上がっていきます。KPIだけでなく、プロセス全体を俯瞰し、関係者全員で共有・改善する文化が必要です。

チェックリストを機能させるには、社内の価値観の共有がカギ

チェックリストは項目が整っているだけでは意味を成しません。それを支えるのが、社内の共通認識、つまり価値観の共有です。ここでは、価値観の統一がなければチェックリストが形骸化する理由を解説します。

判断の一貫性がなければ、チェックは形骸化する

チェックリストが存在していても、関係者の判断軸がバラバラでは、どの項目をどう実行するのかが個人の裁量に任されてしまいます。その結果、「やっているつもり」で終わる項目が増え、実効性が失われていきます。

“採用の軸”が社内でバラバラでは評価も伝え方もブレる

「どんな人を採るべきか」「どんな価値観を大切にしているか」が社内で共有されていなければ、評価基準も候補者への伝え方も人によってバラつきが生じます。採用チェックリストは、この“軸”が揃っていてこそ意味を持ちます。

価値観が共有されていると、チェックの意味が活きてくる

価値観が社内で共有されていると、チェックリストの各項目に対する理解や実行の精度が格段に高まります。「この項目は何のためにあるのか」が浸透していることで、単なるチェック作業ではなく、行動につながる取り組みになります。

採用チェックリストは、組織の内側を整える道具

採用チェックリストは、採用活動を整える“作業手順”ではありません。本質は、組織の内側を見直し、価値観と行動の一貫性をつくるための“鏡”です。そしてその根底には、社員全員が企業の理念や採用観を理解・共有できている状態、つまりインナーブランディングの存在が不可欠です。

「採用がうまくいかない」と感じたとき、まず見るべきは求人広告でも面接手法でもありません。社内の意識・価値観・体制を点検し、共通認識を育てること。それが、採用の成果を確実に高めていく第一歩となります。

弊社のインナーブランディング事例はこちらをご確認ください。】

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深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター

2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても“光る人材“が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナーブランディング」(セルバ出版)。「人が集まる中小企業の経営者が実践しているすごい戦略 採用ブランディング」(WAVE出版)

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