ブランドの理念に関する定義は、企業(経営)理念の定義以上に定まっていません。企業(経営理念)の定義に関しては、例えば「MBA経営戦略」(グロービス・マネジメント・インスティテュート/ダイヤモンド社,1999年)では「時代の流れを超えて、どのような経営姿勢を貫くかという基本的なスタンスを明確化するもの」と定義しています。これを土台に考えると、ブランドの理念とは、「当該ブランド(事業、商品、サービスごと)において、どのように運営姿勢を貫くかという基本的なスタンスを明確化するもの」と言えます。
同著が理念、ビジョン、戦略の関係性を
経営理念-ビジョン-戦略
という関係性を取るのに対して、
私たちむすびは企業(経営)理念とと同様に、ブランドの理念も
経営理念体系(ビジョン/ミッション/バリュー/クレド)-戦略
としています。同著によればビジョンは「企業がある時点までにこうなっていたい、と考える到達点」として、長期目標的な扱いをしているのに対して、私たちの場合、ビジョンとは「企業と顧客がともに目指す世界」として考え、企業(経営)理念の最上位として考えています。つまりブランド理念も「そのブランドと顧客がともに目指す世界」と定義することができます。
ブランド論に照らし合わせると、ブランディングとは、ファンを獲得するために行う活動です。ファンがいるからこそ、ブランドは長く続き、ファンが多いほど、そのブランドの売上は上昇します。つまり、世の中に対して、価値をもたらさなければブランドは存続できず、その視点で考えれば、企業と顧客は本来の理想的な姿は、一心同体であるはずです。ともにそのブランドがある世界を切り開いていく存在としてとらえ、ビジョンを設定することが結局は企業経営を強固にすると考えます。また今日のブランド論をつくったアーカーもまた「ブランド・ビジョン」をブランドの最上位概念として置いており、これらの理由から、私たちは理念の最上位を「ビジョン」としています。
ただし、これらの分類、呼び名はとくに統一見解があるわけではありませんので、企業ごとで呼び名が変わったり、定義が変わっていもいいと思います。
企業(経営)理念の重要性を再認識し、重要視している企業がとくにスタートアップやベンチャー企業で増えています。今後は事業や商品、サービスのブランド理念を重視する企業が増えていくでしょう。