インナーブランディングの要とも言えるブランドブック。それは単なるマニュアル以上の存在です。
この記事では、ブランドブックの基本概念から、その作成、活用の方法に至るまで、ブランドブックが担う役割とその影響力を解説していきます。
如何にしてブランドブックを通じて、従業員一人ひとりがブランドの価値を内面化し、組織全体の強化に繋げるか。現代のダイナミックなビジネスシーンで、ブランドブックがどのように機能するか、その秘訣に迫ります。
ブランドブックの基本概念
企業のアイデンティティと価値観を体系化し、社内外への一貫したメッセージを発信するために、ブランドブックは不可欠です。ブランドブックには、企業のビジョン、ミッション、コアバリューなどの基本理念や、ロゴ、カラーコード、フォントスタイルなどのデザイン基準がまとめられており、社員がブランドを理解し、一丸となって行動するための指針となります。
インナーブランディングにおいて、これらの要素が統一されたメッセージとして内外に伝えられることで、企業の信頼性や専門性を高める効果があるのです。
ブランドブックが果たすべき3つの主要機能
ブランドブックの機能は大きく3つに分かれています。
まず第一に、ブランドのビジュアルアイデンティティを統一するための基準を提供します。使用する色彩やロゴ、タイポグラフィは、コンシステントに適用されるべきで、ブランドブックはそれを保証するためのマニュアルとなります。
次に、ブランドのコアバリューや理念を明確に伝えることです。従業員一人ひとりがブランドの価値を理解し、その価値を体現する行動をとるための基盤となります。
最後に、パートナーやステークホルダーに対するブランドの位置付けを説明する役割があります。これにより、外部との関係構築においてもブランドの信念が明確に表現されることになります。
ブランドブックを構成する要素
ブランドブックには、さまざまな要素が含まれています。これらの要素には、ブランドの理念やビジョン、使命の説明が含まれます。これらの文言は、組織がどのような目的で存在しているか、何を大切にしているかを明確に伝えるもので、従業員の意識づけに直結します。
次に、ビジュアルアイデンティティに関するガイドラインです。これは、ロゴ、カラースキーム、タイポグラフィ、イメージの使用方法など、視覚的にブランドを伝えるための詳細な規定を含みます。
また、コミュニケーションのトーンやスタイルに関する指針もブランドブックには必要です。
これにより、統一されたブランドの声を社内外に響かせることが可能になります。
ブランドブックを活用したインナーブランディング戦略
企業においてインナーブランディングは、社内の価値観を統一し、従業員が企業のビジョンやミッションを体現するための大切な取り組みです。
ここで重要なのが、「ブランドブック」という強力なツールの活用です。
ブランドブックとは企業が持つブランドの核となる思想や価値を体系化したマニュアルであり、社内のコミュニケーションを向上させ、ブランドの一貫性を保つ上で欠かせない存在なのです。
目に見えるビジョンとミッションの共有
ブランドブックが企業内で果たす役割のひとつが、ビジョンとミッションの可視化と共有です。ビジョンとは将来的な理想の状態を示し、ミッションはそのビジョンを実現するための企業の存在意義を指します。
こうした抽象的な概念を具体的な言葉やイメージで表現し、従業員全員に理解しやすい形で示すことが非常に重要です。ブランドブックを通してビジョンとミッションを明確に示すことで、従業員は日々の業務の意義を認識しやすくなり、モチベーションの向上につながります。
ブランドブックを通じたコアバリューの浸透
また、ブランドブックは企業のコアバリューを従業員に徹底的に浸透させる役割も担っています。
コアバリューとは企業の行動基準となる価値観です。これをブランドブックに明記し、日常業務の判断基準として従業員に意識付けることで、企業の理念が行動に現れるように促すことができます。
ブランドブックによって一人ひとりが理念に基づいた意思決定を行い、企業全体としての実行力を高めることができるのです。
インナーブランディングにおけるブランドブックの役立つヒント
企業の内部コミュニケーション戦略で重要な位置を占めるインナーブランディングは、従業員が会社の価値観を深く理解し、それを体現することを促進します。この過程で役立つのが、ブランドブックです。
ブランドブックとは企業が外部に対しても内部に対しても一貫したブランドイメージを発信するためのガイドラインであり、ビジョン、ミッション、コアバリューなどを明確に示す重要なドキュメントです。
インナーブランディングを成功させるために、ブランドブックのヒントを理解し活用することは、非常に有効な戦略となります。
従業員向けの意識改革プログラム
インナーブランディングを推進する中で、従業員が自社ブランドを内面から理解し、体現するように促すためには、意識改革プログラムが欠かせません。
ブランドブックはこのプログラムの核となる資料であり、従業員ひとりひとりがブランドに対して共感し、それを行動に移すためのガイドラインとなります。プログラムでは、対話形式のワークショップやロールプレイ、ディスカッションを取り入れて、ブランドブックの内容を具体的なシチュエーションに応用する訓練を行います。
これにより、従業員がブランドの核となる価値を自分ごととして捉え、その精神を仕事に生かすことが可能となるのです。
高い関与を促すインタラクティブなコンテンツ
ブランドブックを単なるテキストドキュメントとしてではなく、従業員が実際に触れて学べるインタラクティブなコンテンツとして提供することが、関与と理解を深めます。
たとえば、オンラインプラットフォームを活用し、ブランドブックの内容をゲーミフィケーション(ゲームの要素を取り入れ)やクイズ形式で学べるようにし、従業員が楽しみながら学習を進められるよう工夫します。
このアプローチは、特に若年層の従業員に対して高い効果があるとされており、ポイントシステムやランキングを導入することで、競争心を刺激し、積極的な参加を促します。
一貫性のあるブランディングの実施
ブランドブックの活用で最も重要なのは、一貫性をもってブランディングを行うことです。インナーブランディングでは、従業員から経営層まで、企業全体でブランドブックに記された指針に沿って行動し、コミュニケーションを取ることが求められます。
このためには、全従業員がブランドブックを理解し、その精神を共有する必要があります。ブランドブックをベースに社内研修を行ったり、月次会議にてブランドブックのセクションをレビューしたりすることで、全員が一貫した理解と認識を持つことができるよう促します。
これにより、ブランドの価値を外部だけでなく、組織内部においても確実に発揮することができるようになります。
ブランドブックを活用したインナーブランディング推進
インナーブランディングを推進する上で、ブランドブックを有効に活用することは非常に大切です。組織内部でブランドブックを生かしていくためには、具体的なステップが必要になります。
このプロセスは、すべての従業員がブランドの価値観を理解し、組織の目指す方向性を共有するための助けとなるものです。
ただし、これらの制作物はインナーブランディング推進のサポートに過ぎません。
ブランドブックをつくるにしても、中身を作りこまなければ意味がないのです。
この中身の部分をサポートするのが私たちの役目です。制作物はその後の話になります。
制作物とインナーブランディングの関係性については、以下の記事でも解説しておりますので、こちらもご確認ください。
深澤 了 Ryo Fukasawa
むすび株式会社 代表取締役
ブランディング・ディレクター/クリエイティブ・ディレクター
2002年早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループ入社。広告代理店アドブレーン社制作局配属。CMプランナー/コピーライターとしてテレビ・ラジオのCM制作を年間数百本行う。2006年パラドックス・クリエイティブ(現パラドックス)へ転職。企業、商品、採用領域のブランドの基礎固めから、VI、ネーミング、スローガン開発や広告制作まで一気通貫して行う。採用領域だけでこれまで1000社以上に関わる。2015年早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。同年むすび設立。地域ブランディングプロジェクト「まちいく事業」を立ち上げ、山梨県富士川町で開発した「甲州富士川・本菱・純米大吟醸」はロンドン、フランス、ミラノで6度金賞受賞。制作者としての実績はFCC(福岡コピーライターズクラブ)賞、日本BtoB広告賞金賞、山梨広告賞協会賞など。雑誌・書籍掲載、連載多数。著書は「無名✕中小企業でもほしい人材を獲得できる採用ブランディング」(幻冬舎)、「知名度が低くても”光る人材”が集まる 採用ブランディング完全版」(WAVE出版)。「どんな会社でもできるインナー・ブランディング まず教育、そして採用、業績アップ。鉄板の好循環をつくる」(セルバ出版)。